初めまして、片倉と申します。
ただいま私は、多くの高校生が通学路として通る道の途中にある、古めかしい店におります。
店の軒に掛けられた煤けた木の看板には、この店の名である『奥州』が力強く彫られており、年代を感じることでしょう。
自慢するわけではないのですが、事実『奥州』は老舗の和菓子専門店として名を馳せているそうです。
さて私、片倉小十郎は若輩ながらこの店を預からせていただいている者です。
今日も今日とて営業スマイルを浮かべて、お客様の目と口に満足をお届けするべく、痛む胃と戦っております。
…嗚呼、来た。
平日の昼頃はバイトの高校生さんがいない為、私が切り盛りしているのですが、いかんせん人手不足。
どれだけお客様が多いかとお思いでしょうが、実は近所の奥様方が数名いらっしゃるだけなのです。
私に構わず、あるいは私にも話を振りながら、世間話に花を咲かせ、高校生が帰り始める時間になるとお帰りになります。
大輪の花を咲かせるだけ咲かせた彼女達は、売り上げにはほとんど貢献して下さいません。
それもまた私の胃を痛めつけている原因でもあるのですが、実はもっと大きな理由があるのです。
それは…
「何を一人でぶつぶつ言っておるのだ?」
「政宗様!?」
そう、この方です。
私の本職…今はまだはっきりと申し上げられませんが、その本職の方でお世話になっている社長の御子息です。
ちなみにそれとは全く関係ないのですが、私の実家は神社です。
さて、話を元に戻しましょうか。
この政宗様、実は僭越ながらこの私が教育係として、側にお仕えしている方なのです。
政宗様が非行に走らないよう、人の上に立っても恥ずかしくない立派な方になるよう、微力ながら日々奮闘している次第でございます。
「…遂に小十郎が壊れたようだぞ、幸村」
とととととと年上の方を呼び捨てにするなど…っっ!!
「政宗様!!あれほど年上の方を呼び捨てに…!!」
「はは…こんにちは、小十郎さん」
困ったように笑っているのが、この店唯一のバイトさんの真田幸村くん。
「…こんにちは、幸村くん」
彼にはいつも情けない姿ばかり見られている気がしますよ…
「小十郎、腹が減った。それよりお前は早く働け」
ひいっ!!命令口調…っ!?
「はいはい。では着替えてきます」
そう言って苦笑いを浮かべている温厚な青年は、力仕事も細かな仕事もこなせるので、大変ありがたい存在です。
欲を言えば、政宗様も将来はこのような礼儀正しい方に…
「…幸村をそんな目で見るな」
「どんな目ですか…?」
「……うっとり」
「…他意はありません」
「当たり前だ、馬鹿め!」
嗚呼、この口癖も直して頂かなければ…
「準備できました」
和服…といっても上だけですが、これがなかなか好評だと奥様方に伺いました。
詳しくは知らないのですが、彼を見る為だけに訪れるお嬢さん方も多いそうです。
かく言う私も同じものを着ているのですが、幸村くんとは比べ物になりません。
やはり背の高い方が着ると見栄えがしますね。
さて、幸村くんウォッチングもここまでにして、そろそろ学校帰りの高校生さんたちが来てくれる頃です。
早めに仕事の準備をしなければ…と、その前に…
「そうだ。今日から新人さん入りますよ」
「新人さん…ですか?」
「確か幸村くんと同じ高校だって言っていましたが…」
「そうですか。それは良かった。ここ最近、手が回らなくて…」
彼の奮闘振りを間近で見ている私にも、その忙しさはよく分かっております。
でも…手が回らなくなったのは、君がバイトを始めてからですよ。
お客様を惹き付けてくれるのはありがたいのですが、そのお陰でバイトさんを増やさなければならなくなってしまいました。
ふふ…でも何はともあれ、お客様が増えるのはいいことです。
ただ、男の嫉妬というやつか素直に「君がモテモテだからだよ」とは言えないあたり、私もまだまだですね。
「馬鹿め!!お前目当ての客が増えたせいで、手が回らんだけだ!!」
……嗚呼…思ったことを直ぐに口に出してしまう癖も、直して頂かなければ…
「私が…?」
不本意そうな表情は、自覚が全くないわけではないようですが、それを認めたくないようです。
謙虚というか…今時珍しいくらい硬派な青年ですね。
「違いますよ。この店の和菓子のファンが増え…」
「うちの菓子は昔から変わっておらんわ!!こんなにいきなり客が増えるわけなかろう!?」
「いいえ。この店の味が…」
「馬鹿め!!貴様にうちの売り上げを見せてやりたいわ!!売り上げが伸びたのはこの店舗だけだ!!」
さすがに裏事情というやつまで言われれば、幸村くんも黙るしかないようです。
事実この店舗だけ売り上げが伸びているのは、私も存じております。
「あの…」
「あ、いらっしゃいませ!」
気難しい顔をしていた幸村くんが、直ぐに浮かべた爽やかな笑みの先には、これまたかわいらしいお嬢さんが。
数日前に見た覚えのある顔だと気付き
「本多さんですね?」
確認の為にそう訊ねると、花が綻ぶように微笑んで頷いてくれました。
「おお!成美から聞いておる!!しっかり頼むぞ!!」
嗚呼、年上の方に…
「はい」
いや、そこは普通は驚くとこでしょう。
自分より明らかに年下の子供に、こんなに偉そうに言われれば。
しかし彼女はいたって平然と…恐らく彼女を紹介してくれた成美に、前もって聞いていたのでしょう。
「初めまして。本多稲と申します。よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
爽やかに笑みを交わす美男美女に、眼福を得ました。
とりあえず早速ですが彼女には、分からないことは幸村くんに聞いてもらうことにして店に立ってもらうことに…
…これは予感なのですが…男性のお客様も増えそうです…
彼女は仕事を覚えるのも早く、幸村くんとの連携もなかなか上手くいっています。
こんな人を紹介してくれた成美には、あとで菓子でも包んで持って行きましょうか。
その後、メルアドの交換などをして、バイトの時間の変更などが出来るようにしたらしいです。
ついでと言っては何ですが、私も教えてもらいました。
これが後に悲劇を生むのですが…それはまたの機会に。
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言い訳
やっちまいました…調子に乗りすぎたぁっ…�堯福陰◆院─�
意外性(?)を出す為に、初っ端は小十郎さん視点でいってみました。
その意外性に振り回されたのは、他でもなく自分でしたが(笑)
導入部分から纏まりのない話ですみません(^^;)
まあこんな調子でいってみようかと…