復活した信幸は、忠勝の後押しもあって、余計にパワーアップしていた。

ホンダム…もとい忠勝と(やはり気になってしまった)半蔵を引き連れて店に来るなり、幸村に食って掛かった。

「彼女は渡さん!!」

「あ、兄上!?私は無関係ですからっ!!」

「ならば貴様か!!」

「わわわわわわ私はしがない和菓子屋店主ですからっ!!」

そんな小十郎の目に、店先で引き返す女性客が写った。

(あ、もう痛くないや…ふふ…)

どうやら本気で危険な状態らしい小十郎に気付いたのか

「…本人に直接聞けばよかろう…」

菓子を物色していた半蔵が、ぼそりと声を掛ける。

忠勝以外の人間が、一人で真面目に棚の整理をしている稲へ向けられた。

その視線に気付いた稲は、首を傾げてにっこり。

「何の話をされていたんですか?」

実は今まで誰も気にしていなかったが、信幸が大騒ぎをしていただけで張本人には情報は伝わっていなかった。

「「あ…」」

「滅…」

ここまで騒いでしまった以上、信幸も引っ込みが付かなくなったらしい。

そして、あの日の忠勝の言葉が、彼の背中にタックルをかました。

「わ、私の…」

「はい?」

「よよよよよよよよよよよよ嫁になって下さい!!!!」

「よめ?」

「Y・O・M・E!!お嫁さんに…っっ!!」

「え…?…わ、私がですか…?」

「はっ、はい!!」

「嫁!?」

「はい!!」

「ええっ!?」

普段の彼女からは考えられないくらい、稲は混乱しているようだ。

そりゃ、いきなりプロポーズされれば、誰でもパニックを起こすだろう。

「あ、貴女の為なら、改名も厭いません!!」

ぶっちゃけ、信幸本人も何を言っているのか分かっていないらしい。

「待て待て待てーーーーいっっ!!」

だが、最大の難関が待ち受けていた。

「貴様の言っていた女人とは稲のことか!?」

「はい!!本多先生!!」

その顔は「言われた通りに、彼女に体当たりしました!褒めて下さい!」とでも言いたげな顔だった。

幸村の兄だけあって、彼もまた犬属性なのかもしれない。

「い、稲は…」

だが、忠勝的にはそれどころではない。

「稲は、拙者の娘だああぁぁぁぁああぁぁぁあぁあぁっっ!!」

「え!?」

ようやく名字が同じだけではないと気付いた信幸は、本多親子の(似ていない)顔を交互に見る。

そして、驚いたままの表情で忠勝に視線を固定すると

「お、お義父さん!?」

「お義父さんと呼ぶなああぁぁっっ!!」

「何故です!?お義父さん!!」

「だからお義父さんと呼ぶな!!それほどに稲を嫁に欲しくば、この忠勝を倒してからにしてもらおう!!」

「いいえ!!お義父さんに手を上げるなどできません!!」

「お義父さんと呼ぶなああぁぁぁぁああぁぁぁあぁあぁ!!」

店内のガラス窓が震えるほどの忠勝の絶叫にも、信幸は全く怯んだ様子を見せない。

「貴方のような立派な方は、私の目標ですが…力で解決しようとは思いません」

今時の若者には珍しいくらい、一本気なその言動に忠勝も落ち着きを取り戻したらしい。

じっと信幸の視線を受け止める。

それに、彼が学生の時から「こんな息子がいれば」と思ったことも一度や二度ではない。

暫く睨み合いが続いた後、忠勝の方が折れた。

「…貴様なら…稲を大切にしてくれそうだ…」

「はい!もちろんです!!」

「…っ…よかろう…稲は…我が娘は……貴様に託そう…」

「お義父さん…!!」

「義子よ…!!」

「父上ぇえぇぇっっ!!」

「息子よぉおぉっっ!!」

「父上ぇ(略)おぉっ(略)上ぇえぇ(略)子よぉぉ(略)ぇっっ!!」

それを何度か一頻り叫び合い、熱い抱擁をしている。

やや離れた場所から眺めていた傍観者達は、その暑苦しい光景を、ただ呆然と見ることしかできなかった。







「あ、あの…私はどうしたら…」

自らが全く話に加われない状態の稲が、戸惑うように皆を見ると

「そ、そうだね…どうしようか…」

「あ〜…どうしたらいいでしょうか…」

「…アドレスだけ交換しておけばよかろう」

やはり最後まで関わってしまった半蔵が、投げ遣りに呟く。



この件は、とりあえずアドレス交換で終幕した。







その後、稲と信幸がどうなったかは、追々わかるだろう…

















言い訳

ど、どうにか…無理矢理…収拾…

↑えっ!?収拾ついてる!?

いい加減、サナハンにしたい…(笑)

って…学校での話は!?

やはり打ち合わせ通り、和菓子屋がメインになってしまいました…

次からは、また別の話を始めますんで…