この作品は、13531Hit記念(?)キリリク作品です。

踏んで下さった火月さん以外のお持ち帰りはご遠慮下さい。









傍らの温もりに縋りついた時に気付いた、肩や首筋に残る違和感は、恐らくタイガーが噛み付いたもの。

英雄であるバードはそれなりに鍛えているが、痛いものは痛い。

力加減も考えず、ぎゅうぎゅうと抱き締めてくるタイガーの腕を軽く振り払うと

「お前さぁ…噛み癖直せよな…」

「がう?」

「無自覚かよ!!」

きょとんと首を傾げるタイガーに、バードは歯型が付いているであろう場所を指し示す。

そこでようやく気付いたらしく、タイガーの目が見開かれた。

「お前…この癖直さないと、女抱けねぇぞ?」

「バード以外抱かないからいい」

ちょっと不満そうに即答するタイガーに、バードの顔が一気に赤く染まった。

自覚はあるらしくバードはその顔を見られないように、目の前の胸板に額をすり寄せる。

「…バード…」

嬉しそうに名を呼びながら、羽を痛めてしまわないように腕を回す。

しばらくそうしていたが、物足りなくなったのかタイガーがごそごそと動き出した。

不審に思ったバードが顔を上げると、目の前にタイガーの顔がある。

「え?」

驚いたバードににっこりと笑いかけると、避けようと思えば思えるほどの緩慢な速度で唇を重ねる。

驚きはしたもののバードはこの行為は嫌いではない。

身体の力を抜くと、タイガーに全て委ねた。



呼吸が苦しくなってきてタイガーの腕やら肩を叩くと、その時になって相手の様子に気付いたタイガーが慌ててバードを解放する。

呼吸を整えるバードが落ち着いた頃を見計らって、もう一度唇を寄せた。

呆れたような表情を浮かべたバードだったが、それを拒むことはない。

そのことに満足そうに喉を鳴らしたタイガーは、まるで猫みたいでバードの口元にも笑みが浮かぶ。

先程の深いものとは違い、唇を舐めたり軽く噛んだりするだけの戯れのような口付けだった。

お互いがお互いの唇を追いかける奇妙な攻防戦の合間に、遂に笑いを堪えきれなくなったバードが

「食い千切るつもりかよ…」

「タイガー、そんなこと、しない」

叱られた子供のような情け無い表情で、タイガーは必死に訴える。

「バードが痛いこと、しない」

「そ、そうか…」

そんなタイガーの表情を直視できず、ぎこちなく視線を逸らす。

常々、大切にされているという自覚はあったが、こうしてはっきりと言葉で言われると照れるしかない。

俯いてしまったバードに不安を覚えたのか、タイガーは鼻先をバードの髪に埋もれさせ、甘えるような仕草をする。

(こういうとこが可愛いんだよなぁ…)

苦笑しながら顔を上げると、ちょっと安心したような表情のタイガーが再び顔を寄せた。

そのまま深いものになりそうだった口付けから、するりと逃れて

「お前の唇も柔らかいな」

「…食べる?」

不安そうな眼差しが可笑しくて可愛くて、バードは声を上げて笑った。

もし、バードが頷いたら、タイガーはそれを差し出すつもりなのだろう。

「食わねぇよ」

確かにマシュマロみたいだけどな。

なんて冗談を言ってから、常々思っていることを告げた。

「俺もお前が嫌がるようなこと、したくねぇし」

自分も相手を大事に想っていると、伝えたくて。

その笑顔を失いたくないと、願いたくて。










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