私は空へと連れていってもらえない。
今日009が空から攻撃するために、002に空へ連れて行ってもらっていた。
そういえば昔――第一世代だけの時代――に004が戦闘の時に抱えてもらっていたわ。
…戦闘に参加したら、私も空へと連れて行ってもらえるかしら?
「バカ!何やってんだ危ないだろうが!」
普段はあまり使わない加速装置を使ってまで、002がふらふらと歩き出した私を止めてくれた。
「…ごめんなさい。私…空へ連れて行ってほしくて…」
ああ…こんな時に私は何てことを言っているのだろう。
「……ここでじっとしてろ」
そう低い声で呟くと、002はまた戦いの場に戻って行った。
呆れられたかしら?
少し悲しくなったけど、何でかしら?
「…おい」
いろいろ考えていたら、いつの間にか戦闘が終わっていたみたい。
思い起こせば、今日は一切、戦闘には参加していない。
「おい。何ぼおっとしてんだよ」
「お疲れ様」
「おう…ってそうじゃなくて…」
言い淀む002の声を、遠くから009の声が遮る。
「二人とも!帰らないのかい?」
「今行くわ!…ほら、帰りましょ?」
立ち尽くす002の袖を引っ張り、みんなのもとへ向かおうとした。
だって話があるのなら、帰ってからでも充分時間はあるはず。
「あ〜〜っ!!くそっ!!」
いきなりそう叫んだ002は頭をかきむしると、私の腕を掴み
「お前らは先に帰ってろ!」
みんなに大声で告げて、歩き始める。
「え!?」
遠目にもみんなが驚いていた。
もちろん私も。
「行くぞ!」
「え…?どこへ…」
問いかけても答えない。
急に視界が変わったと思ったら、いつの間にか横抱きにされていた。
それに気付くと今度は、どんどん地面が遠くなっていく。
「え?え?」
「……空へ行きたかったんだろ?」
ぶっきらぼうな言い方は、彼が照れている証拠。
それが彼の最大限の優しさだということも知っている。
「002!どこへ行くんだい!?」
地上で呆然と見上げる皆と違い、一人だけ009が叫んでいた。
「まぁそう妬くなって!」
「なっ!?」
図星なのか、009の顔が遠目からでも分かるくらい赤くなった。
誰と誰の戦いなのか…
戦いでしか、空には連れて行ってもらえないのね…
苦笑いがこぼれた。
009には悪いけれど、もうしばらくこの景色を目に焼き付けたい。
もう、しばらく空へ連れて行ってもらわないから。
BACK