何故虚無か。
何がそんなに虚しいのか。
彼の言葉や態度に、時々胸をつかれる思いをさせられる。
そこには深い悲しみを感じずにはいられない。
「何が、悲しい?」
「珍しいな。お前さんが話しかけてくるとは…」
驚いたような表情の後には、またいつものニヒルな笑み。
知っているわけではないけれど、予測できる。
…大切な女性がいた頃は、もっと穏やかな笑みを浮かべていたのではないだろうか…と。
「彼女は自然に還った…何を悲しむ?」
唐突に思い出を蒸し返されても、004は嫌な顔はしなかった。
それどころか…
「ああ…そうだな…」
殺傷能力の高い武器にもなる右手を差し伸べて…
「…もしかしたらこの風が…」
少しだけ表情を緩めて…
「あいつかもしれないな」
表情が読み取りにくいが、その顔は悲しみに沈んではいなかった。
「穏やかな、風か…」
そう告げると、何も言わずに004は目を閉じて頷いた。
きっと、その女性は、そういう人だったのだろう。
「確かに俺はあいつと同じようには、自然に還れないが…」
…つまりはそういうことなのだろう。
「あいつと共に…生きていけるさ…」
彼は彼なりに彼女への想いを、自らの中で昇華したのかもしれない。
満足そうな笑みは、やはりどこか空虚だったけれど。
「…何が悲しい?」
同じ質問を繰り返すと、少し考えてから
「まぁ…強いて言えば……あいつらが傷つくのが…か?」
004がみんな(特に10代の仲間)を見て笑った。
そこには愛する人を想い続ける、心配性な男がいた。
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