どれだけひき止めても、彼は帰っていってしまう。
空を見上げた。
彼の乗った飛行機は、きっともう空の彼方なのに…
それでも、飛行機を見かけると彼の事を想ってしまう。
不意に電線と飛行機が重なった。
それが、飛行機が電線に絡まったみたいに見えて…
それが、電線が飛行機を絡め取ったみたいに見えて…
自分がしたかったことをしてくれたみたいで…
そこまで考えて、ちょっと少女趣味だったかな?
なんて思って、苦笑いと共に歩き出そうとした瞬間。
想った。
いや…
思った。
…002ってさ…パスポートとか…持ってるのかな?
飛行機に乗る姿まで(003には及ばないが常人離れした視力で)見届けたのに…
それが『搭乗手続きは滞りなくすんだ』ということの証であるはずなのに…
(入国審査で引っかかったら…)
そう思うと急に不安になった。
彼の乗った飛行機は、きっともう空の彼方なのに…
それでも、飛行機を見かけると君のことを思ってしまうんだ。
きっと、こんなにも気になるのは…
彼が乗ったはずの飛行機が、もう既に離陸してしまっているから…
───ちょっと待って!!!!
君!パスポートは!?
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