テレビや本を通して見るよりも、美しい地球が近付いてきた。
「僕らは…帰るんだね…」
口を動かさなくても通信機で伝えられるのだが、無意識のうちに口を開いていた。
「ああ…母なる地球ってやつか?」
空気を振動させて音を伝えることが出来ない宇宙空間で、それでも普段と同じように口を動かす。
まるでそれが、当たり前であるかのように。
「じゃあ…お母さんの側に帰るんだね?」
「ん?まぁ…そういうことになるかな?」
引き寄せる母の力の強さに、ジョーは笑った。
「ふふっ…まだ子離れ出来ていない母親みたいだよね」
「ああ…我侭な母さんだな…」
苦笑交じりのジェットの言葉に、ジョーも苦笑を浮かべた。
「僕らも親離れできていないのかな?」
「…できねぇだろうな…」
「だね。僕らは結局ここから離れては生きていけないんだ」
「ああ…」
通信機を通して伝わる声に、やや変化が起き始めていた。
普通の人間よりも遥かに丈夫な肌でも“熱い”と確かに感じた。
「ただいま。お母さん」
「I'm home. momma」
翻訳機が、壊れた。
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