あの事件…ヒューズ中佐…いや、ヒューズ准将が亡くなってから、数年経った。

ほとぼりは冷めたとはいえ、悲しみまでが消えたわけではない。

それでも、エドは聞いておきたいことがあった。

だから、再び二人の前に現れた。



久々の訪問の為か、エリシアは大はしゃぎ、グレイシアも快くエドを迎えた。

ゆったりとした時間を過ごして、不意に会話が途切れた瞬間、エドは質問を口にした。

「エリシアちゃん…お父さん…好き?」

いきなりの質問に、きょとんとした後

「うん!パパね、いっつもエリシアのこと抱っこしてくれてね…」

えへへと笑いながら父の記憶を楽しげに語る子供に、自然とエドも笑顔になる。

もしかしたら忘れかけていた父親への恋しさを、再び抉るようなことを言ってしまったかと思っていた。

しかし、目の前の子供は父の死を受け入れ、そして変わらぬ愛を注いでくれた父を、まだ愛している。

「グレイシアさん…今でも中佐…好き?」

「え?ええ…もちろん」

少し悲しそうに、でも彼女は微笑んで見せた。

「そっか…だよね」

その時、エドはとても安心したことを覚えている。





10年後、エドは同じような質問を彼女達にした。

「ええ…思い出の中のお父さんは、いつだって私に微笑んでくれるわ」

「もちろん。実は再婚の“さ”の字だって思い浮かばなかったのよ」

あの頃よりも、深い笑みを浮かべる二人に、エドの表情も自然と和らいでいった。





ずっと墓参りはかかしていない。

その日も、ロイと二人で思い思いの花を手に、そこへ来ていた。

二人で墓前に花を手向けつつ、エドは呟く。

「死んだ人でも、愛されるんだよ?」

「…鋼の…」



一番ではないけれど、大好きな人が肩を抱いた。





だから、いつかくる別れの時も…









05.怖くない





BACK