情事の後の気だるさを振り払い、エドは纏わり付くシーツから離れようとした。

しかしそれは、大きな掌に右手を掴まれることで、あっさりと阻まれる。

「…触るな…」

エドは左手でその掴んでいる手を振り払った。

「何故?」

振り払われた手を、所在無げに空中に漂わせたままロイは尋ねる。

ベッドに腰掛ける時に走った鈍い痛みに、一瞬だけ顔を歪めたエドは、大きく息を吐き出し呟く。

「……冷たいだろ?」

「今はね」

ロイはそう言うと、漂わせていた手で再びエドの右手を掴む。

「え?」

振り返ったエドの目に、枕に頬を埋めたまま柔らかい笑顔を浮かべるロイが映った。

「元に戻るのだろう?」

少し眠たげに微笑むロイの、いつもでは考えられない無防備さにエドは怯む。

「そりゃあな…」

今更何を言い出すのかとエドが見ると、やけに爽やかな(それでいて胡散臭い)笑顔を浮かべて

「だったら君がもとに戻った時のために、今のうちに触れる癖をつけておかなければね?」

「何だその理屈」

「ただ君に触れたいだけさ」

「…言ってろ…」

おしゃべりはここまでとばかりに、ロイはそのよく回る口を優しく塞いだ。







本当は嬉しかった。

だから、思った…

弟の為だけでなく、自分の大切な人の為にも。







俺は…









08.止まれない





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