たまたま暇な時間が重なっただけの、デートと言うには短すぎる、二人だけの時間。
話したいことは二人とも多く抱えていたが、いざ会ってみると何もせず隣で座っていることが心地よかった。
別れの時が近付いていることに気付いたのか、ロイが不意に口を開いた。
「君達がもとに戻ったら…一緒に暮らさないか?」
「は?バカ言うな。もとの体に戻ったら、大佐とは縁を切る」
真剣に言い切ったエドに、ロイの片眉がぴくっと動いた。
「おや。それは酷い。ならば君と縁を切りたくない私は、君達がもとの体に戻らないように、妨害すればいいのかな?」
いつも協力的な男の冷たい声に、エドの表情が強張る。
「冗談だ…そんな傷ついたような顔はしないでくれ」
そう言ったロイの方が泣きそうな表情を浮かべていた。
「いつまでも機械鎧のままでは大変だろう?弟にも、私の焔の暖かさを教えたい」
「え?」
急に左手を包んだ温もりに、エドが左に顔を向けると、柔らかな笑みのロイがエドの手に自らの手を重ねていた。
「早く…もとの体に戻れるといいな」
つまり…それは…
「もちろん今まで通り、協力は惜しまないよ」
立ち上がってエドを見下ろすその目には、嘘など欠片も見られなかった。
だからエドは安心したように微笑み、差し出された手を掴んで立ち上がる。
「やっぱ保留」
「何がだい?」
「もとの体に戻った時…どうするか」
「保留…ね。私もそれを希望するよ」
苦笑いの大人に、同じような苦笑いで子供は返す。
「…じゃあ…保留ってことで」
だが、子供はどこかで思っていた。
自分達の願いが叶う時…
彼の願いが叶う時…
そこには…もう…