※ご注意下さい!!

何をトチ狂ったか現代パロです。

注意書きも前作「どうせなら愛してると叫べば良い」から続いております。

お下品で露骨な表現もあるかと思います。

大丈夫かも!と言う方は「注意長いよ…」と思いつつスクロールぷりーず。















時計を見てみれば、既に深夜と言っていい時間だった。

元親の作った夕食を食べて入浴を済ませて、明日提出の元親のレポートを元就が渋々手伝ってから数時間経っている。

レポートが終わると同時に元親が襲い掛かって、今の今まで解放しなかったわけだからかなり無茶をしたようだ。

いつの間にリビングからベッドに移動していたのか、実はあまり覚えていない。

何度か気絶した元就が意識を取り戻したのを確認してから問い掛ける。

「なぁ元就…俺らってさ…どういう関係?」

目が覚めた時に、元親がまだいたことに驚いたらしい元就は、すぐに思い切り顔を顰め

「……幼馴染であろう?」

「いや、でもよぉ…普通は幼馴染ってこんなことしねぇだろ?」

散々好き勝手やっておいて、そんなことを平気で訊ねる男に、元就の不機嫌ゲージも振り切れそうだ。

「……うるさい黙れ。我はもう寝る。去ね」

「つれねぇなぁ…」

そう呟きながら煙草に火をつける元親に、いつものように眉間に皺を寄せた元就は何も言わずに溜息をついた。

幾ら小言を言っても、元親が止めないので諦めたようだ。

煙から逃れるように元親に背を向けると、シーツを頭から被ってしまった。







政宗と佐助とのやり取りを思い出しているうちに、煙草の半分くらいは灰皿に落ちていた。

ふと隣を見遣った元親は、煙を吐き出すと共に溜息をつく。

時折不規則になる呼吸と小刻みに揺れる細い体で、また元就が泣いていることが分かる。

所々もう渇いてしまった白濁によって汚れた己の体を見下ろして、元就の体はこれよりも汚れているのだろうと気付く。

風呂に連れて行くほど自分も体力が余っているわけでもない元親は、妥協案を告げてみた。

「……濡れタオルとかいるか?」

何の気なく問い掛けると、背を向けていた元就が勢いよく起き上がった。

「な、なんだとっ!?───ッッ!!」

だが痛みの為かすぐにベッドに沈み、シーツを握り締めて痛みをやり過ごす。

「お、おい…大丈夫か?」

「…急に変なことを言いおって」

こんな関係になってから初めてベッドの中で気遣いを見せた元親を、元就は訝しげに見ている。

「変なことって…」

「…もういい。疾く去ぬるがいい」

今にも泣き出しそうに俯いたその肩に思わず元親が触れると、どこか縋りつくような視線で元就が見上げる。

だがその見たことのない表情に元親が目を見開いたことで、自分がどんな表情をしているか気付いたらしい。

「憐れみなど、いらぬ」

微かな声で呟くと、片方の唇だけを上げて哂う。

それは元親を嘲笑うというより、自分自身に向けられたもののようだった。







珍しく直ぐに帰る気になれず、二本目の煙草を銜えながら、ぼんやりと煙を目で追いかける。

隣で背を向けている元就は寝てはいないようで、押し殺した嗚咽が聞こえた。

それが酷く悲しかった。

正直なところ元親は、嫌いなら嫌いだとはっきり言って欲しいと思っている。

しかしそう言われたところで、この訳の分からない関係を終わらせる気はない。

これほどまでに元就の側にいられる関係が、他にあるだろうか。

側にいられるだけでなく、彼の中にまで侵入できるのだ。

それを快くは思っていないだろうが、それでもその事を許してくれている。

少なくとも彼は、己以外とこういった行為をしていない。

それが酷く嬉しかった。

少なくとも彼にとって、己は特別な存在だと知ることが出来る。



歪んではいるが、その感情が指し示す言葉に、思い当たってしまったらしい。

煙草を銜えようとする動きを止めた元親は、その煙草を指が灰皿の底にぶち当たる勢いで押し付ける。

勢いがよすぎたらしく少し指先に熱を感じたが、その痛みも彼に叫ぶ勢いを与えたようだ。

「マジかよっっ!?」

「うるさい」

シーツ越しのくぐもった声に、元就がまだ起きていることも、元親に反応する気があることも知る。

それもまた、彼に勢いを与えたのか、気付いたことを元親はすぐに告げた。

「俺…お前のこと好きみたいだ」

「は…?」

驚きのあまり涙の跡もそのままに、聞き違いかと振り向いた元就の目を真っ直ぐに見つめる。

その瞳を見ながら、自分に確認するかのように元親は言い募った。

「こういうことすんのも…お前が好きだからなんだ」

「……寝言は寝て言うがいい」

アホ臭い、と呟いてまた向こうを向いてしまった元就の肩を掴み

「ちょ、聞いてくれって!!」

「…聞く価値もない。その言葉…どこぞの女にでも言うてやれ」

感情を抑えつけたように震える声でそう言うと、元親の手を振り払う。

「女にゃ言わねぇって!」

「…気でも触れたか?」

完全に背を向けられてしまいそうな気配に、慌てた元親は自棄のように問い掛けた。

「お前も俺のこと好きなんだろ?」

「………とことん目出度い頭よ…」

「じゃあ何で嫌がらねぇんだよ!!」

後悔してもその言葉を撤回できようはずもないが、息を呑んだ元就に気付いた途端、またしても元親の中に期待が生まれた。

しかし、彼はとことん素直ではなく、冷笑を浮かべると

「嫌がっても無駄であろう?」

体格からして本気で抵抗しても無理だと分かるからこそ、元親はややバツの悪い表情で最も気になっていたことを訊く。

「…だったら何で最中に俺の名前なんか呼ぶんだよ?」

変に期待するだろうが、と元親が力なく呟くと

「名…だと…?」

今の今まで気付いていなかったらしく、一瞬にして元就の顔が赤くなった。

そして、それが示す己の感情を悟られたことを知ったのか、今度は青ざめる。

自分の考えに確信を持った元親は、畳み掛けるように問い掛けた。

「…何でだ?」

相手に余裕が出てきたことが分からない元就ではない。

観念したのかゆっくりと起き上がると、下から睨みつけて叫んだ。

「分からぬか!?そうまでしても貴様から離れたくなかっただけだ!!」

「…それって…」

やっぱり好きってことだろ…?

そこまで言ってしまえば元就も黙るしかない。

「晴れて両思いだな?」

悔しそうに唇を噛み締める元就を強引に抱き寄せると、今までにない恥ずかしさのような感情が湧いてきた。

「…何か言ってくれよ。照れ臭ぇ…」

「……今までとあまり変わらぬ気がするが」

体を強張らせたままの元就は力なく

「……貴様の“夜のお友達”とやらに加わっただけだろう?」

その言葉でまだ元就が誤解していることに気付いた元親は、内心慌てる。

ちょっと変わった幼馴染から、セフレに昇格しただけだと思われるのは心外だった。

「よし…女とは手を切る」

「…誰もそこまでしろとは…」

「いや、そうしねぇと俺の気がすまねぇし…お前だって、嫌だろ?」

一度だけ元親の目を見て、すぐに視線を逸らした元就は僅かに頷いた。

「よし、決まりだ」

これからは恋人って思ってもいいな?と訊ねれば、肩を跳ねさせた後、躊躇いがちに頷く。

それを愛しいと思う感情は、昔から持っていたはずなのに。

「俺らさぁ…かなり馬鹿だよな…」

「…ああ…誰が見てもな」

温もりに安堵したのか、元就の体から徐々に力が抜けていった。

嬉しそうな笑みを隠せない元親は、逆に抱き締める腕に力を込める。

漸く欲しかったものを手に入れたのだ。

「明日にでも政宗と佐助にお礼言っとこ…」

「……何故そこで伊達と猿飛の名が出てくる…?」

「恋愛相談したから」

あっけらかんと言う元親が、自分達の関係を上手くぼやかして話したとは考えにくい。

哀れ、彼らは二人の関係を赤裸々に語られてしまったのだろう。

そう言われてみれば、ここ最近の二人の視線に妙な気遣いが見えていた気もする。

彼らの生温い笑顔が、漸く意味を持って元就に届いた。



「こっ…この痴れ者が!!」



絶叫と共に、幸せ一杯の顎にアッパーが決まった。