いつから孤独になったのだろう。
「マスタング中佐?」
涼やかな声に閉じていた眼を開けると、心配そうに茶色の瞳が覗き込んでいた。
「ん…?おや…眠っていたか…」
すまない。
そう言って苦笑いを浮かべた上司から、視線を外すことなくホークアイは問い掛ける。
「大丈夫ですか?ここのところあまり休まれていないようですが…」
その言葉に少し考える仕草をした男は、やはり苦笑しつつ
「そう言われてみれば…そうだな」
ホークアイが再び問いかけようとした時、ノックの音が部屋に響いた。
その音に目に見えて動揺したマスタングは、それでも震える声を抑えるように言葉を放つ。
「入れ」
「失礼します」
するとすぐにドアは開き、書類を抱えたハボックが入ってくる。
さすがに書類の上に灰が落ちたらまずいので、今はタバコを銜えていない。
マスタングは入ってきた人物を確認すると、今までつめていた息をゆっくり吐き出し椅子に背を預ける。
その様子に不審なものを感じながら、ハボックは書類を机に重ねていく。
「どーかしたんすか?」
書類を置き終わるとハボックはそう訊ね、マスタングとホークアイを見る。
「いや…なんでもない…」
そう言って笑う顔にもどことなく覇気が感じられず、ハボックとホークアイは顔を見合わせる。
「何か気がかりなことでも?」
ホークアイの質問にマスタングは目を上げ、不適に笑った。
「無いとは言わない。だが、もしこのことを話したら君達に不審がられてしまうだろうからね」
「これ以上、不審に思いようがありません」
ホークアイはそう言ってきびすを返す。
「少尉…どこに行くんすか?」
ショックを受けて固まったマスタングの代わりに、ハボックが訊ねると
「折角、中佐が話す気になったのだから、皆を連れて来るわ」
皆も中佐の不調を気にしていたから。
そう言って部屋を出て行くホークアイを見送って、マスタングは隣にぼんやり立っている男に訊ねる。
「…そんなに態度に出ていたのか…?」
ハボックはタバコを取り出しながら、苦笑いで肯定を示した。
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