気が付けば、ここまで来ていた。
「やっぱり緊張するね…」
「今年の一年は、入部試験を突破してきた…それなりに頼れる者達であることを祈るのみ…」
「うん。楽しみだね」
にこりと微笑んだ牛尾はふと頭に手を当て
「ねえ…髪型おかしくなってないかな?」
もとが十分おかしいのだが、牛尾はいつも通りになっているかということを確認したいようだ。
ここにツッコミ担当の鹿目がいれば、全身全霊で突っ込んでくれるのだろうが、幸か不幸か彼はまだ来ていない。
「うむ。いつものように男前也」
もちろん蛇神がそれにツッコミをいれるとは考えられない。
案の定、真面目な表情で蛇神が答えたため、牛尾は照れながら
「…ありがとう」
と言ってトンボを手に取る。
「じゃあ僕はいつものようにトンボをかけてるから…みんなにグラウンドに集合だと伝えてくれないかい?」
その言葉に、頷いた蛇神は背を向けた牛尾に声を掛ける。
「牛尾…覚えておいてほしい」
振り返った牛尾は、真剣な口調だがその穏やかな表情に
「何?」
つられるように微笑を浮かべて聞き返した。
「…これからも、我は…」
あまり見せない秘蔵の笑顔で
「頼って欲しい也」
そう言った蛇神に、牛尾は泣きそうな笑顔で…
「うん」
確かに頷いた。
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