人が通ったところに、道はできる。
弟がもとに戻ったと聞いても、反応できないほどエドは沈み込んでいた。
それを見かねたのか、不意に思い出したかのように“誰か”が声を発する。
「最後に一つだけ…なんでも願いを叶えてやろう」
「…何でも?」
どこか光を失った金の眼に、一瞬だけ煌きが戻った。
「ああ…あっちに戻ることは出来ないがな」
「なんでも…っつったって…」
いきなり言われても、今のエドは何も考えられない状態だった。
「…会いたい奴とかいるんじゃないのか?」
そう言われて思い出したのは、弟でも、母でも、幼馴染でも、その祖母でも、なかった。
ただ、一人の、笑み。
どうしても、逃れられなかった思い。
違う。
どうしても、逃れられない想い…
…今でも。
…こんな場所に閉じ込められても。
心は遠く、あの人のもとへ。
そうだ。
あの人に、会いたい。
あの人に…会いたい。
「…い、たぃ…あ…た……」
自然とエドの頬に、涙が筋を作った。
「あいたい」
偽りのない、言葉だった。
偽りのない、涙だった。
それは目の前の人物も、よく知っていた。
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