いっそのこと、この想いもなかったことにしてほしい。
朝を迎えることも無く、またこの場所へ戻っていた。
まるであの温もりさえ、幻だったかのように。
「満足か?」
「…んなわけねぇだろ…」
会うだけで満足できるはずはない。
「会えたんだろ?」
「ああ…会えたさ」
そしていざ会ってみると、やはり自分の気持ちが抑えきれないだけだった。
「ならいいじゃないか」
「いいわけあるか!」
自らの立てた仮説が正しいとは、はっきりと言い切れない。
それは恐怖にも似た不安だった。
「未練が募った?」
「分かってんなら聞くなよ…」
図星を指されて、少しだけ冷静になれた。
目の前にいる“誰か”にあたっても仕方ないと分かってはいる。
「戻れないぞ?」
「分かってる」
「戻りたいか?」
「…戻りたい」
「だろうな」
「お前に何が分かる!!」
「…分かるさ」
よく聞けば、その声には聞き覚えがあるような気がした。
「言っただろ?俺は…」
初めてこの場所に来た時と、同じ光景。
「お前だ」
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