どうしても、追いつけない。
年齢も、身長も、階級も…
きっとどれもが彼に追いつかれるとは思っていない。
だが…どうしてだろう。
どうしても、追いつけないものがある。
『気高さとは、その人のなすことの出来ないことの中に宿るのではないか』
まさにその通りだと思う。
もし、これが彼らにとって簡単な道のりならば、彼はこんなに血の滲むような努力をしただろうか?
何度も泥にまみれながらも、立ち上がっただろうか?
泥の中から見つかる砂金のように、僅かながらも輝いていただろうか?
そして、何より…
これほどまでに長い間、頼ってくれただろうか?
それらに対する回答を、自分は既に持っている。
そのどれもが『否』。
願いを叶えて欲しいと思う反面…
ずっと頼って欲しいとも思う。
何をやっても埋まらない差…
だが、気付いた。
ようやく、気付いた。
その差が、広がることもないのだと。
彼は少なくとも、こちらに譲歩しようとしてくれているのではないだろうか?
…ならば、私もそれに答えよう。
もしかしたら…少しくらい近付けるかもしれない…
あの…魂に…
何をやっても埋まらないけれど…
何もしなければ…それまでなのだから。
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