手を伸ばせば届きそうだった。

何故か笑った君の体に、触れられたはずなのに。

寸でのところで…躊躇った。







「それが…」







だって彼は…『触れてはならない』ものだから。

この手で触れるには、あまりにも綺麗だから。

どれだけ血に染まっても、輝きを失わない彼は…

どれだけ血に染まっても、もう畏れさえもしない自分は…

結局のところ、同じ場所にいても…

存在自体が違うのだ。

魂の在りようとでもいうべきか…

どこまで行っても縮まらない距離。

実際には手を伸ばせば届く距離なのに、触れてはならない。

いつからか自らに科した罰。

『彼に触れてはならない』

それが断罪でも懺悔でも…

救われないと…知っているのに。

そうまでしないと、保てない自我。

助けてくれ。

助けてくれ。

助けて…

何から?

誰に?

どうして?

もう…答えは出ているはずなのに。

それでもまだ、ここから動けない。





いっそのこと、奪えたらいいのに。

いっそのこと、叫べたらいいのに。

いっそのこと、壊してしまえたらいいのに。

いっそのこと………愛せたらいいのに。



何も畏れず…君を…


アイセタラ…







「…距離だ」







目の奥が熱くなったが、頬を濡らすことはかなわなかった。









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