確かに焦りすぎたとは思う。
反省もしている。
ああ!!反省しているさ!!
だが、これは明らかに…
「大佐…エドワード君とアルフォンス君が、もう既に中央に向かったそうです…」
逃げられた。
「なぁ…ハボック…」
「なんすか?大佐?」
「なぁ…ハボック…」
「なんすか?マスタング大佐?」
「なぁ…ハボック…」
「なんすか?焔の錬金術師殿?」
「なぁ…ハボック…」
「なんすか?マスタングさん?」
「なぁ…ハボック…」
「なんすか?ロイさん?」
「なぁ…ハボック…」
「なんすか?ロイ?」
「なぁ…ハボック…」
「なんすか?無能?」
「なぁ…ハボック…」
「なんすか?ヘタレ?」
「誰がヘタレだ」
さすがにこれは腹立たしい。
少しは自覚しているんだ。
ハボックを睨みつけると、あからさまな溜息が返ってきた。
「仕事してくださいよ」
「うるさい。仕事が気になるくらいなら、お前なんかに話しかけん」
「…相変わらず、俺の扱い酷いっすね…」
「お前はそれくらいでいい」
「へいへい」
部下いじめも飽きてきたな。
視線をハボックから、手元の資料に向けた時、丁度電話が鳴った。
電話の交換手との短いやり取りの後、急にロイの表情が柔らかくなった。
待ちわびていた者からの電話だったらしく、珍しくロイの表情が緩みっぱなしだ。
「中尉…あの笑顔…」
「見慣れないと気味が悪いわね」
「確かに…っていや…そういうわけじゃなくて…」
「何?少尉?」
「結構前に…大将が駅で倒れた時…あったじゃないですか」
「ええ…」
「で…無事だって分かった時と…同じ笑顔っす」
「あら…」
そんなに昔から…?
挙動不審な上司を見る優秀な部下の目は、驚きと優しさを滲ませていた。
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