駅から…それもイーストシティの駅から電話をかけていたようだ。

彼の声の後ろから聞こえるアナウンスは、紛れもなく聞き覚えのあるそれだ。

電話を切ってから20分ほど経っているだろうか?

駅から司令部まで歩いて30分ほど。

あの二人はいつも歩いてここまでやってくる。

しかも今日はきっと早足で来ていることだろうから…そろそろ着く頃だろう。

立て込んだ仕事もないし、せめて入り口まで迎えに行くとしようか。

執務室の大きな窓から空を見上げる。

「君達は…どの雲を見ていたのかな?」

同じものが見れないのは、仕方ない。

だが、見たいと思うのは我侭だろうか?










入り口付近の階段で、ここで再会した時のように待ちわびる。

遠くに、大きな鉛色の鎧と小さな赤い豆が見えてきた。

やはり早足で来ていたらしく、豆の息が少し上がっていた。

「二人とも、お帰り…」

十分に近付いたところで、言いたかったことを言う。

二人は驚いたように顔を見合わせて

「ただいま帰りました!」

一度だけ写真で見た事のある、アルフォンス君の笑顔が目に浮かぶようだ。

「…た、ただいま」

照れくさそうにしているのは、紛れもなく私の…



私の…何なのだろうな?



唯一無二?

恋人?



どんな言葉で言い表そう?

どんな言葉でなら言い表せるだろう?





これから、探していくとしよう。



君と、二人で。








だから…



届くわけがないと分かっている。



どこかの空の下から…



でも…


もし…




もしも、ここに帰ってくるのなら…



それは確定的ではない約束。



何度でも言いたい。



「おはよう」
「おやすみ」
「いってらっしゃい」
「お帰り」



ありきたりな挨拶を。



私は、何度でも。









TOP     BACK     POSTFACE